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口腔ケアのポイント―口腔保湿
[公開日:2019/7/30 /最終更新日: 2019/7/30 ]今回は、口腔保湿についてご紹介します。唾液は幅広い役割を持っていますが、年を取るにつれて分泌量は減ってくると言われています。唾液の量が減ってきた時の日常での注意点や、口腔保湿剤の使用についてご紹介します。
DOCTOR’S PROFILE
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東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 医歯学専攻
老化制御学講座 摂食嚥下リハビリテーション学分野教授
とはら はるか
戸原 玄先生
口腔保湿剤の使い方
唾液の役割
唾液は1日に約1~1.5リットル分泌されると言われていますが、どのような役割があるかご存知でしょうか?おそらくでんぷんを分解する作用があることはご存知の方が多いでしょうが、他にも様々な役割があるのです。
唾液がでんぷんを分解するのは、ご飯を長く噛んでいると甘い味に変わってくることで実感できます。食べ物を食べると味がするのは、唾液が食べ物に含まれる味物質を溶かし出し、舌の上を中心に分布する「味蕾(みらい)」という味覚をつかさどる器官に運んでくれるからです。
口腔内の微生物や食べかすを洗い流し、中性に保つ働きも見逃せません。口腔内の酸性が強いと歯を溶かすことにつながり、逆にアルカリ性が強いと粘膜を傷めてしまいかねません。唾液が持つ抗菌作用のおかげで、細菌の増殖が抑えられています。ある種の薬物を排出する作用もあります。
唾液を大まかに分けると、サラサラな「漿(しょう)液性唾液」、そしてネバネバな「粘液性唾液」の2種類があります。
漿液性唾液は、リラックスしているときや食事をしているときに出やすく、食べ物を飲み込みやすくしてくれます。
一方の粘液性唾液は、緊張しているときや不安なときに出やすいとされ、細菌に絡みついて体内への侵入を防いだり、口腔内を保湿したりする働きがあります。
唾液の量が減ってきたら
このように幅広い役割を持つ唾液ですが、加齢とともに分泌量は減ってくると言われています。唾液の量が少なくなると、生活にさまざまな支障が出て不便に感じることが多いでしょう。
唾液不足でお困りであれば、水分をよく取る、食事のときはよく噛む、なるべくストレスをつくらない、等を心掛けてください。
最近、薬局では様々な口腔保湿剤が販売されています。こうしたものを試してみても良いでしょう。
口腔保湿剤について
口腔保湿剤は、大きくリキッドタイプとジェルタイプに分かれます。
一般的にジェルタイプの方が保湿効果は良いですが、健康でもお口の機能が徐々に低下してきているような高齢者の方や、シェーグレン症候群の患者さんといった、セルフケアが可能な方にはリキッドタイプの方がサラサラしていて良いと思います。
ジェルタイプは、保湿以外にも、清掃時の汚れのふやかしや汚れの回収、マッサージの潤滑剤などにも使用できます。
口腔保湿ジェルはお口から食べにくくなった患者さんが日常生活で安全に味を感じられる商品です。
患者さんが毎日の口腔ケアを心待ちに思えるように、味の違う口腔保湿ジェルを複数種類準備して、使用場面に応じて患者さんのお好みの味を選ばれてはいかがでしょうか。
開口していただけないような方でも、口腔保湿ジェルの味を変えることでお口を開けていただける可能性もあります。
唾液の量が減る原因
ただ、唾液量の減少の陰には病気や薬の副作用が隠れていることも少なくありません。気になるようであれば積極的にかかりつけ医に相談してみてください。