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オーラルフレイルとサルコペニア
[公開日:2020/1/30 /最終更新日: 2020/1/30 ]人は噛めないと一体どのような不都合があるのでしょうか?自分の好きなものが食べられないなど、食事の楽しさが軽減してしまいます。また、噛めない状態を放置して噛みやすいものばかりを食べていると、栄養面での偏りが起こります。その結果、「サルコペニア」と呼ばれる状態になることがあります。サルコペニアになると転倒や入院のリスクが上昇するとされており、そうなる前の「オーラルフレイル」の状態に気付き、早期に対策をすることが非常に有用です。
DOCTOR’S PROFILE
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東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 医歯学専攻
老化制御講座 摂食嚥下リハビリテーション学分野講師・教授
やまぐち こうへい
山口 浩平先生
とはら はるか
戸原 玄先生
口腔機能の変化に気付き、早めの対策を
サルコペニアとは
咀嚼運動の複雑さは、前の記事でお分かりいただけたかと思います。
それでは、人は噛めないと一体どのような不都合があるのでしょうか?
まずは、自分の好きなものが食べづらい、食べられないなど、食事の楽しさが軽減してしまうことは非常に大きな問題です。
また、噛めない状態を放置して噛みやすいものばかりを食べていると、栄養面での偏りが起こります。
肉や葉物は特に噛みづらいため、自ずとそうした食物を避ける傾向になります。
葉物が少なければ食物繊維が不足し、便秘などの原因になるでしょう。
また、肉などのタンパク質は筋肉をつくるために不可欠な栄養素です。
タンパク質をあまり摂らない生活を長く続けていると、筋肉量や筋力が次第に低下していき、「サルコペニア」という状態に陥ります。
サルコペニアはわかりやすく言えば病的な身体機能低下、筋力低下、筋肉量減少であり、加齢や活動量の低下、栄養の偏りによって起こるとされています。
そして、サルコペニアの状態が長く続けば、転倒や入院などのリスクが上昇するとされています。
オーラルフレイルとは
噛みづらい食べ物が増えた。
こんな些細なことが、実はサルコペニアの入口になります。
口腔は消化管の入口であり、食べる、話すなど重要な機能を担うので、些細な変化があるとご自身で変化を感じやすい臓器とも言えます。
口腔機能のささやかな低下を「オーラルフレイル」と呼びます。
オーラルフレイルはそのままにするとサルコペニアに繋がる可能性がありますが、早期に対応することで回復できる状態でもあります。
早期に対応するには早期発見が非常に重要ですが、口腔機能のささやかな変化にはどのように気づけば良いのでしょうか?
ご自身でできるチェック項目
まずは、ご自身のセルフチェックが必要です。
噛みづらい食べものが増えたと感じていないか、歯の治療やメインテナンスをおろそかにしていないか、肉などのタンパク質をしっかり摂っているかなどを振り返ることが重要です。
試しに、3日分程度、ご自身の食事を紙に書き出してみると良いでしょう。
改めて見返すと、ご自身で気づかなかった問題点がわかるかもしれません。
もし身の回りに、管理栄養士など栄養のプロフェッショナルがおられるならば、その資料をもとに栄養指導を受けることも有用です。
歯科医院でできるチェック項目
さらに、最近では歯科医院で諸々の口腔機能を測定することができます。
噛む力、舌の力、舌の器用さ、噛む機能などが測定でき、ご自身の口腔機能を客観的に知ることができます。
もし仮に基準の値を下回る項目があれば、適切なリハビリテーション指導や歯科治療を受けることもできます。
些細な口腔機能の変化を侮らず、早めの対策をすることが、全身の健康のためにも非常に有用なのです。