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オーラルフレイルの予防
[公開日:2020/4/30 /最終更新日: 2020/4/30 ]オーラルフレイルはささやかな口腔機能の低下です。噛みづらい食べ物が増えた、むせやすくなった、食べこぼしが増えた、滑舌が悪くなったなどの症状があります。オーラルフレイルはリハビリテーションや適切な歯科治療で十分に回復可能な状態ですが、この状態を放置し続けると栄養状態の偏りなどにつながり、サルコペニアと呼ばれる状態になることもあります。その予防には、オーラルフレイルの早期発見・早期対策が重要です。
DOCTOR’S PROFILE
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東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 医歯学専攻 老化制御学講座 摂食嚥下リハビリテーション学分野
医員・教授
やまぐち こうへい
山口 浩平先生
とはら はるか
戸原 玄先生
回復可能なオーラルフレイル
オーラルフレイルとは
オーラルフレイルは前の記事でも述べたとおり、ささやかな口腔機能の低下です。
噛みづらい食べ物が増えた、むせやすくなった、食べこぼしが増えた、滑舌が悪くなったなどの症状があります。
ただ、オーラルフレイルはリハビリテーションや適切な歯科治療で十分に回復可能な状態です。
しかしながら、この状態を放置し続けると栄養状態の偏りなどにつながり、より深刻な状況を招きます。
そのため、オーラルフレイルの早期発見、早期対策が重要です。
それでは、オーラルフレイル予防、対策とは何をすれば良いのでしょうか。
基本的には、バランスの良い食事をして、よく話して、健康に楽しく過ごすことが重要です。
バランスの良い食事をとることは良い栄養状態の維持につながりますし、よく話すことは舌や頬などの運動にもなります。カラオケなども良いでしょう。
高齢になると、外出の頻度も減り、周囲とのコミュニケーションが希薄になりがちですが、なるべく人と接する機会を持ち続けることが大事です。
自宅でできる舌押し付け訓練
ここで、簡単な訓練を紹介します。
舌全体を上アゴに思い切り10秒間押し付ける舌押し付け訓練です。
10秒の休憩を挟みながら5回を1セットとし、1日、朝、晩2セット程度行えば十分です。
舌の筋力や滑舌の改善だけではなく、飲み込みにも良い影響があることがわかっています。
定期的に歯科検診へ
定期的な歯科検診も重要です。
虫歯は痛くなってから受診するのでは遅すぎる場合も多々あります。歯周病の進行はご自身ではなかなか気づけません。
また、口周りの筋肉を良い状態に保つ上でも歯は重要です。
歯がなくなれば当然咀嚼しづらくなりますし、咀嚼筋という噛む筋肉の萎縮をまねくこともわかっています 2)。
また、たとえ歯がなくなって義歯になったとしても定期的なメインテナンスは重要です。
これまでもお話ししたように口の機能というのは加齢や栄養状態など様々な要因で少しずつ変化していきます。
しかし、義歯はあくまで補助具ですのでその変化には適応できません。義歯の人工の歯がすり減ったり、合いが悪くなったりします。合いの悪い義歯を我慢して使い、食べやすいものばかり食べる生活は栄養面での偏りに繋がり、サルコペニアなどを招きます。
かかりつけの歯科医師を作って、良好な関係を保つことも皆さんの健康維持、増進の一助となるでしょう。
1)Namiki C, Hara K, Tohara H, Kobayashi K, Chantaramanee A, Nakagawa K, Saitou T, Yamaguchi K, Yoshimi K, Nakane A, Minakuchi S. Tongue-pressure resistance training improves tongue and suprahyoid muscle functions simultaneously. Clin Interv Aging. 2019 Mar 22;14:601-608.
2)Yamaguchi K, Tohara H, Hara K, Nakane A, Kajisa E, Yoshimi K, Minakuchi S. Relationship of aging, skeletal muscle mass, and tooth loss with masseter muscle thickness. BMC Geriatr. 2018 Mar 8;18(1):67.