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口腔内を簡単にアセスメントしよう

[公開日:2020/4/30 /最終更新日: 2020/4/30 ]

口は万病の基とも言われています。体調がすぐれなくなると、歯と接する粘膜部分の炎症や、唾液分泌量の低下や乾燥等、様々な現象が見られます。お口の観察を習慣にしておくと、全身症状が現れる前にいち早く不調に気づくことができます。 そこで、みなさんや患者さんが健康で楽しい毎日を送っていただけるよう、簡単にできるお口の観察方法をご紹介します。

DENTAL HYGIENIST’S PROFILE

口腔内を簡単にアセスメントしよう

公益社団法人 大阪府歯科衛生士会

歯科衛生士

おおにし よしみ

大西 淑美先生

口腔内を簡単にアセスメントしよう

毎日お口を見てみましょう

口は健康のバロメーター

疲れると「口内炎ができる」「舌が白くなる」「歯が浮く、うずく」「口臭がする」「口角が切れる」等、様々な症状で信号を発信することから、口は万病の基とも言われています。

歯は人間の身体の中で最も硬い組織です。
お口の中は、硬組織(歯)と軟組織(上あご、口腔底、口腔前庭、頬粘膜、歯肉、舌、そして口唇)からなります。

抵抗力が下がると、硬組織と接触する粘膜は炎症が起きやすくなります。
熱が出ると唾液が減り、乾燥しやすくなります。咀嚼や会話が減ると、唾液が出にくくなります。

お口を毎日観察することで、自覚症状が現れる前にいち早く気づくことができます。それは万病の重症化予防につながります。

今回は、がん、循環器疾患、糖尿病や自己免疫疾患、その他の様々な疾患をお持ちの方はもちろん、健康な方にも習慣化していただきたい観察方法をご紹介します。

ご自身で観察する場合 ~日々の歯磨きの時に鏡の前で~


ご自身で観察する場合 ~日々の歯磨きの時に鏡の前で~

セルフチェックの流れをご紹介します。

1)口唇・口角の乾燥、ひび割れ、出血が無いかを観察します。

2)開口し、お口の中全体を観察します。
※ 開口すると口唇や口角に痛みや出血を伴う場合があります。
※「あー」と声を出すと喉の奥が見えます。

3)上唇をめくり、上唇の裏側と前歯の歯肉を観察します。

4)同様に下唇をめくり、下唇の裏側と前歯の歯肉を観察します。
※ 特に下唇は、脱水や低栄養、抗がん剤の副作用としてひび割れや出血、潰瘍が出現します。

5)舌を「べー」とできるだけ前に出して舌全体を観察します。
※ 舌の先、表面、奥、縁、裏はそれぞれ構造が違うので見落とさないように注意しましょう。
※ 免疫力の低下、低栄養や脱水状態が続くと舌先端に発赤や歯型、舌苔(白、黒、黄色等)や乾燥、ひび割れが出現します。
※ 舌がまっすぐ前に出せているかも確認しましょう。麻痺があると麻痺側の方へ振られます。

6)舌で上あごを舐めるようにして舌の裏側を観察します。
※ 潰瘍があると、上にあげることで痛みを伴うことがあります。

7)8)左の口角、右の口角を舐めるようにして左右の舌の縁を観察します。
※ 免疫力が下がると、歯型に沿って粘膜炎や潰瘍が出現します。
※ 潰瘍や咬傷は治りにくく、重症化すると痛くて話しづらくなります。
※ 麻痺があると、咬傷があっても気づかないことがあります。

9)10)左右の頬粘膜を広げて粘膜を観察します。
※ 免疫力が下がると、歯型に沿って頬の粘膜にも潰瘍が出現します。

11)12)13)14)頬粘膜を上に広げ、上下の歯肉を観察します。
※ 麻痺があると、麻痺側に食渣の停滞や、カンジダ症状(粉チーズ状の汚染)が出現します。
※ 免疫力が下がると、歯肉が腫れたり、出血や排膿を伴うことがあります。

★point1:観察時に手鏡を使いましょう。自立タイプを使用すると両手が使えて便利です。

 

患者さんの口腔内を観察する場合 ~日々の検温や口腔ケア介助の前に~


患者さんの口腔内を観察する場合 ~日々の検温や口腔ケア介助の前に~

次に、臥位や座位等ベッド上の患者さんの状態を観察する際の流れを紹介します。

基本的にセルフチェックの内容と同じですが、流れるように観察することで患者さんの負担が軽減し、また、観察者の見落とし防止に繋がります。そのため順番を少し変えています。

1)口唇・口角の乾燥、ひび割れ、出血が無いかを観察します。

2)開口してもらい、お口の中全体を観察します。

3)開口したまま口蓋を観察します。

4)軽く下を向いてもらい口腔底を観察します。

5)舌の裏を観察します。

6)舌をまっすぐ出してもらい舌表面と舌先を観察します。

7)8)舌の辺縁を観察します。

9)10)開口した状態で左右を向いてもらい、頬粘膜を観察します。

11)歯肉と口唇、磨き残しなどを観察します。

★point2:対象者が臥位の場合は簡単ですが、座位の場合は観察者がしゃがんだ状態で下から見上げるようになります。
上を向いてもらう際、後頭部を軽く支えましょう。

★point3:舌を動かしてもらう方向へ指で促したり、「まっすぐ出して、天井に向けて、左に出して、右に出して」と声をかけます。

★Point4:お口を閉じた状態では指が入りにくいので少し開けてもらうと入れやすくなります。
また、頬に指を沿わせると咬まれる心配がありません。

★point5:右の頬粘膜から歯肉、前歯の歯肉、口唇、左の歯肉と頬粘膜へ移動しながら観察しています。
硬口蓋の乾燥や汚染は見落としやすく、セルフチェックでの観察は難しいため、他者による観察が必要です。

口腔内観察にあたって

朝昼晩のいつでも良いので1日1回の口腔観察を習慣化しましょう。歯磨き前に観察するとケアのポイントが確認できます。

昨日と比べて変化がある場合・・・
口唇炎や口角炎にはリップクリームやマスク、口腔保湿用ジェルで保湿しましょう。
歯の磨き残しがあると、磨き残された歯の周囲の頬粘膜や舌に炎症が出やすくなるので、丁寧に歯垢を落としましょう。
それでも出血や潰瘍化が見られる場合は、歯科受診の予約を早められるように相談しましょう。

患者さんにとっては、他者にお口の中を見られるのは少々恥ずかしいものです。
また、体調がすぐれない時にお口を開けたり指を入れられたりすると、嘔気を誘発することもあります。
口腔内に異物が入ると口は閉じようとします。唾液を嚥下するときも口は閉じます。
そのため、患者さんの口腔観察の際は必ず声掛けを行い、唾液嚥下のタイミングを確認しながら、患者さんが負担なく受けていただけるようにしましょう。

最後に、虫歯や歯周病等のお困り事がなくても定期的に歯科検診を受けられるかかりつけ歯科を持ちましょう。

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