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在宅と口腔ケアについて
[公開日:2020/10/22 /最終更新日: 2020/10/30 ]在宅歯科訪問で口腔ケアを実施するということは、その患者様が要介護となりご自身で口腔ケアができないだけでなく、専門家の手を借りなければ解決しない場合に歯科に依頼が来るものだと考えています。 その際、在宅においての口腔ケアは、歯科衛生士が行う口腔健康管理として、多職種と協働しながら介護に介入する事が大切です。
DENTAL HYGIENIST’S PROFILE
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まき歯科医院(埼玉県さいたま市)/特別養護老人ホーム湘南ベルサイド(神奈川県茅ケ崎市)/日本障害者歯科学会認定歯科衛生士/在宅療養指導・口腔機能管理認定/生活習慣病予防(特定保健指導・食生活改善指導担当者)認定
いの さだこ
猪野 貞子先生
在宅での口腔ケアの必要性について
介護の中の口腔ケア
在宅歯科訪問で口腔ケアを実施するということは、その患者様が要介護となりご自身で口腔ケアが出来ないだけでなく、専門家の手を借りなければ解決しないとケアマネージャーが判断し、歯科に依頼が来るものだと考えています。
家族などの介護者は生活介護において、ひとつひとつ対応方法を専門職から習得していきます。
排泄介護なども上手になられますが、最後に問題となるのが口腔ケアです。
口腔内は見えにくい場所であり、傍でみているだけでは習得できない技術だからです。
口腔ケアを実施するにあたって
痰吸引が必要な患者様の場合、実施された口腔ケアの適否で大きく影響が出てきます。
間違った口腔ケアをしていると、口腔ケア時の水分と細菌が気管へ流入することで、痰がより一層増えてしまい、喀痰出来ないでストレスが溜まり寝付くことが出来なくなる場合もあります。
家族も痰での窒息事故にならない様、夜中に何度も起きなければいけなくなります。
頻繁に吸引すると咽頭が傷つき、疼痛で吸引チューブを咬むなどの拒否行動を起こす事もあり、要介護者と介護者の両方が疲弊してしまいます。
他にも口腔乾燥が強いと口腔内に炎症を起こしやすくなり、ちょっとしたことで舌や粘膜が傷つき出血が起こることがあります。
その際、口腔保湿用ジェルや口腔保湿用スプレーなどの湿潤剤を有効に使用した口腔ケア方法と、マッサージを実施し、唾液分泌をはかるなど口腔内保湿の徹底を指導する必要があると考えています。
在宅においての口腔ケアは、歯科衛生士が行う口腔健康管理として、多職種と協働しながら介護に介入する事となるわけです。
口腔ケアをとりまく環境
8020運動1)達成者が50%を超えた昨今では、その達成者が要介護状態となる事例が多くなって行くのは必至です。
その方々も要介護状態になるまでは、ご自身でセルフケアをなされ毎日気持ちの良い清潔な口で就寝されるのを習慣にしていたに違いありません。
歯科衛生士が週に一回訪問した時だけ口腔ケアがなされ、清潔な口腔内になれば良いのでは無く、毎日が爽快な口腔内に維持されるのを目標にしなければ問題は解決しません。
介護者に口腔ケアを実施していただけるようであれば、訪問時に毎回少しずつ口腔ケア方法の体験をしてもらい、スキルアップを図る必要があると思います。
老々介護や状況に応じてそれを望めない時は、他職種に情報発信し協力を求める必要があり、それは歯科としての責任と考えています。
*8020運動1):日本において展開されている歯科に関する運動で、満80歳以上で20本以上の歯を残そうとするのが主目的である。
厚生労働省や日本歯科医師会により推進されている。