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口腔ケアで予防する嚥下障害 -口腔期 食物の送り込み-
[公開日:2021/7/30 /最終更新日: 2021/7/30 ]食べること・飲むことをいう摂食嚥下において、口腔期という段階があります。口腔期は口の中で咀嚼してまとめられた食物を、舌を使ってのどの奥まで運ぶ段階を指します。口腔期で正しく食物を送り込むことでその後の飲み込みにもスムーズに繋げることができ、摂食嚥下において重要な段階といえます。筋力低下などにより舌の動きが悪くなると、口の中に食物が残ってしまったり、食物の移送が飲み込みのタイミングと合わないなどの問題が起こってきます。
SPEECH-LANGUAGE-HEARING THERAPIST’S PROFILE
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大阪赤十字病院 リハビリテーション科
言語聴覚士
たかはし こうへい
髙橋 浩平先生
口腔期における口腔ケアについて
口腔期とは
摂食嚥下における口腔期とは、口の中で咀嚼した後まとめられた食物を、舌を使ってのどの奥まで運ぶ段階を指します。口腔期で食物をのどまで送り込んだ後は、摂食嚥下の核ともいえる飲み込み、いわゆる“ごっくん“が待ち構えています。口腔期での食物の移送がスムーズに行われないと、後の飲み込みに影響し誤嚥のリスクを上げることに繋がります。
口腔期を正常に行うためには、舌の動きに異常がないかなどを日頃の口腔ケアのタイミングでチェックすることがポイントです。また、口腔ケアの際に簡単な舌のトレーニングを行うことも筋力低下などを防ぐために効果的です。
口腔ケアとともに舌のチェックとトレーニングを
口腔ケアは舌の動きや状態を詳しく観察できる場面です。また、近年は食後だけでなく食前に口腔ケアを実施するケースも増えており、口腔ケアに合わせて舌の簡単なトレーニングを行うことは、食事における口腔期をスムーズに行う手助けになります。
口腔ケアといえば歯を磨くというイメージが強いかもしれませんが、歯や歯茎だけでなく舌にも汚れは蓄積します。また、舌は非常に乾燥しやすい部分でもあります。口腔ケアでは歯を磨くだけでなく、舌の清掃も合わせて行うように心掛けてください。ただし、舌は非常にデリケートな部分であり表面には味覚を感じ取る細胞がたくさん存在しています。清掃の際は、口腔ケアスポンジや専用の舌ブラシを用いてやさしくケアを行うようにしてください。
舌の清掃に合わせて、舌の前後左右あるいは上下運動を行ってもらい動きに異常がないかをチェックすることも重要です。前後運動では舌を大きく前に出す・のどを触るように後ろに引く、左右運動では口角に舌の先端が触れる、上下運動では口を開けた状態で上下の唇に触れるといったような形で各方向への舌の動きを観察して異常がないかなどを確認しましょう。
例えばこれらの運動を5-10回程度実施することで、舌のトレーニングにも繋がり、食事の際の口腔期をスムーズに行う手助けになると思います。食前のトレーニングは無理をすると体力を消耗し、かえって安全に食事ができなくなるなどの問題が生じることもありますから、回数や頻度は医師や歯科医師などに相談しながら無理のない範囲で行うようにしてください。
食物をのどの奥へ送り込む口腔期は摂食嚥下において非常に重要な段階です。普段の口腔ケアで舌の状態や動きを注意して観察することで、口腔期におけるトラブルにいち早く気付くことができ、誤嚥を予防することに繋がると思います。
★髙橋先生が携わる摂食嚥下障害予防普及団体SMAが運営する「嚥下チェッカー」はコチラ