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舌のケアについて
[公開日:2023/4/28 /最終更新日: 2023/4/28 ]今までのコラムの中では、
お口の中でも歯、歯茎、義歯(入れ歯)といった
部分のケアに着目してきました。
今回は口の中でも、日常の口臭から嚥下に関係する
「舌」に注目して、「舌」のケアについてお話しします。DOCTOR’S PROFILE
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・東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 医歯学専攻
老化制御学講座 摂食嚥下リハビリテーション学分野 非常勤講師
・静岡県立大学短期大学部歯科衛生学科 講師・東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 医歯学専攻
老化制御学講座 摂食嚥下リハビリテーション学分野 教授(診療科長)まつばら ちあき
松原 ちあき先生
とはら はるか
戸原 玄先生
舌ケア方法について共に学んでいきましょう
舌苔とは
舌をべーっと前に出してみると、白い苔のようなものが付いていることがあります。これが舌苔(ぜったい)とよばれ、口臭や舌苔に付着した細菌が原因で誤嚥性肺炎を引き起こすこともあります。舌の表面は、舌乳頭(ぜつにゅうとう)と呼ばれる突起が複数存在します。そこに口の中ではがれた粘膜(口腔剝離上皮膜)や細菌、食物残渣が付着することで、舌苔となります。
舌苔の付着には個人差がみられますが、舌のケアが不十分であることや食べ物の種類や食べ方、唾液の分泌量の低下、舌運動機能の低下などがあげられると言われています。
お口が乾き気味の方や食事をお口から摂っていない方は、舌苔が付きやすい可能性があるので、お口の中を観察する際は、舌の様子も観察することが重要です。
舌ケアの方法
舌苔は粘着性があり、さきほど述べた舌乳頭の中に入り込むため、お水で流しただけでは除去できません。そこで、舌ブラシや柔らかい歯ブラシを寝かせて使用することが必要となります。
舌ケアを行うときは、舌の後方部分から手前に、「奥から手前」へかき出すように舌ブラシを動かして、除去した舌苔と舌苔に付着した細菌を口の外に出すことが大切です。また舌清掃後は、含嗽ができる場合は、ガラガラうがいを、含嗽が困難な場合は、口腔ケアウエットティッシュなどで、ふき取りを行うことでより効果的な舌ケアが行えます。
また、お口の乾燥が強い方は、保湿剤を舌の上に塗布してから舌ケアを行うとよいでしょう。乾燥したままの状態で舌ブラシを用いて磨いてしまうと舌を傷つけてしまう原因になります。また保湿してケアを行うことで乾燥して固着した舌苔が除去しやすくなります。
しかし、1日に何回も舌清掃を行ったり、強い力で磨いたりすると、舌乳頭を傷つけてしまうため、注意が必要です。また歯磨きと一緒に歯磨き粉を使用すると歯磨き粉に含まれる研磨剤の成分で舌を傷つけてしまうので、水で濡らした舌ブラシ等での清掃がよいでしょう。
舌苔は1回の舌ケアでは完全に除去できない場合もあります。毎日の舌ケアで改善されるため、少しずつケアしていくことが大切です。
舌ケアの注意点
舌苔には、お口の中ではがれた粘膜や細菌、食物残渣が元となると前述しましたが、全身の状態や、飲んでいるお薬の影響、舌の運動機能の影響で付着することや、口腔の粘膜疾患が隠れている場合もあります。そのため、機械的に舌苔を除去するだけでなく、全身の状態を把握することも大切です。
そういった全身状態の影響が考えられる場合は、お近くの歯科医院へお気軽にご相談ください。
参考文献
- ・歯科衛生学シリーズ 高齢者歯科学 医歯薬出版株式会社 一般社団法人全国歯科衛生士教育協議会 監修
- ・Hidaka R, Furuya J, Nishiyama A, Suzuki H, Aoyagi M, Matsubara C, et al. Structural Equation Modeling of Tongue Function and Tongue Hygiene in Acute Stroke Patients. Int J Environ Res Public Health. 2021;18(9).
- ・Furuya J, Beniya A, Suzuki H, Hidaka R, Matsubara C, Obana M, et al. Factors associated with the number of microorganisms on the tongue surface in patients following acute stroke. J Oral Rehabil. 2020;47(11):1403-10.