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乾燥する時期の口腔内乾燥対策
[公開日:2024/1/15 /最終更新日: 2024/1/15 ]晩秋から春にかけてぐっと気温が下がる季節は、乾燥対策が必要になってきますが、口腔内の乾燥対策はどのように行っていけば良いのでしょうか。
今回のコラムでは、口腔乾燥の確認方法とその原因、保湿剤についてお話します。DENTAL HYGIENIST'S PROFILE
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東京医科歯科大学
摂食嚥下リハビリテーション分野ながさわ ゆうき
長澤 祐季先生
とはら はるか
戸原 玄先生
乾燥する時期の口腔内乾燥対策に関して
口腔内を確認する
まず、口腔内がどの程度乾燥しているかを確認しましょう。確認方法として口腔水分計を用いる方法や、ガムテストやサクソンテストなどの唾液量を測定する方法などがあります。目視の確認では、唾液の粘性が亢進している場合を軽度、泡沫状の唾液がある場合を中等度、ほとんど唾液が見られない場合を重度の口腔乾燥とみなします。また、機能的評価も合わせて行うと良いです。口腔機能低下の兆候例としては食べ物が口の中に残るようになった、口の中が汚れている、食べこぼしするようになった、滑舌が悪くなったなどが挙げられ、当てはまる場合は、歯科医師・衛生士など専門職による口腔機能精密検査を検討してください。
口腔乾燥の原因を考える
口腔乾燥の原因は様々で、原因は大きく分けて2つあります。ひとつは、唾液腺そのものに機能が低下・障害されていることに起因するものです。シェーグレン症候群や頭頸部癌への放射線照射療法による唾液腺障害が含まれます。ふたつめは、二次的な口腔乾燥です。これには加齢に伴う唾液分泌量の低下や服用薬剤の副作用によるものが含まれます。抗うつ薬や抗精神病薬には口腔乾燥を引き起こすものが含まれるため、注意が必要です。また、修飾因子として先述した口腔機能の低下、脱水や低栄養が口腔乾燥を増悪させる場合もあります。口腔内の観察だけではなく、覚醒や意識レベル、発熱などがないかも確認しましょう。
口腔乾燥を認める場合の対応
口腔乾燥の原因が全身状態に起因している場合、まずそちらを対処する必要があります。シェーグレン症候群に対しては塩酸セメビリンなどの唾液の分泌を促進する薬が処方されることもあります。また、薬剤の副作用が疑われる場合は主治医に相談することも検討しますが、ほとんどの場合は変更困難であり、この場合は対症療法で対応することが多いです。対症療法として、保湿剤の使用や口腔リハビリテーションが挙げられます。口腔機能の低下が認められる場合には、唾液腺マッサージなどの口腔リハビリテーションの実施が有用です。
保湿剤の特性と注意点
乾燥状態の改善の基本は保湿ケアです。保湿ケアでは、口に潤いを補うため保湿剤が使用されることが多いですが、その特性を知っておく必要があります。保湿剤の成分の大半は水分であり、そこに粘性を加えることで口の中に長く留まるよう工夫されています。つまり、経時的に乾燥し水分が蒸発して失われていくと粘性を作る成分のみが口の中に残り、被膜を作ります。そこに口の粘膜から剥がれた上皮などが加わるとより乾燥を強めてしまうため、保湿剤は数時間おきに除去して塗り直す必要があります。また、口腔粘膜に口内炎や傷がある場合は、アルコールが粘膜を刺激しないよう、アルコールフリーの保湿剤を使用しましょう。
参考文献:高齢者歯科学 第1版/医歯薬出版/2023, 他職種協働チーム先制医療での口腔ケアFAQ50/一世出版/2016