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お口が原因で起こる病気―心臓病・糖尿病
[公開日:2018/10/30 /最終更新日: 2018/10/29 ]お口の中の細菌が、お口だけではなく体の他の部位にも悪影響を及ぼすことが分かってきています。様々な悪影響の原因は、主に歯周病菌です。 ここでは、歯の健康と心臓、及び糖尿病との関係を考えてみましょう。お口の中を清潔に保つことが全身の健康に繋がりやすいようです。
DOCTOR’S PROFILE
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東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 医歯学専攻
老化制御学講座 摂食嚥下リハビリテーション学分野教授
とはら はるか
戸原 玄先生
歯周病が影響する全身疾患
歯周病と心臓病
口の中の細菌が、口だけではなく体の他の部位にも悪影響を及ぼすことが分かってきています。
様々な悪影響の原因は主に歯周病菌です。歯肉炎と歯周病は異なる病気です。歯磨きを怠ると歯の付け根に細菌がたまり、歯茎に炎症を起こすのが歯肉炎です。歯肉炎が進行すると歯と歯茎の間の溝である「歯周ポケット」の中で細菌が繁殖して歯を支える骨を溶かすため、徐々に歯がぐらぐらしてきます。この状態を歯周病と呼んでいます。
歯の健康と心臓との関係を考えてみましょう。歯の周りにある歯周病菌は、歯周ポケットにできた潰瘍部分の毛細血管から体内に入り込んでいきます。もともと心臓に先天性の疾患があったり、心臓の弁に問題があったりすると、毛細血管から入った菌が心臓内の膜に付着して炎症を起こすことがあります。これを「細菌性心内膜炎」と呼びますが、死亡率は30%前後ともいわれます。
他にも、血液中のコレステロールが血管壁の内側にたまると、死んだ細胞などを食べる白血球の一種「マクロファージ」がコレステロールを処理してくれますが、その処理が繰り返されるとマクロファージが血管壁内に詰まっていき、血管の壁が次第に内側に膨らんできます。この結果、動脈硬化が起こり、血管が細くなっていきます。動脈硬化は心筋梗塞や脳梗塞、くも膜下出血など様々な病気の原因となるのですが、歯周病菌などの口腔(こうくう)内細菌は、マクロファージを血管壁に誘導する作用、さらには血栓の発生を促す作用もあります。
歯周病と糖尿病
また、糖尿病がある人は炎症が治りづらい分、歯周病も治りづらくなるのですが、歯周病自体が糖尿病に悪影響を及ぼすことも分かっています。歯周病菌が引き起こす炎症性の物質が毛細血管を通して体に入ると、肝臓や脂肪細胞に作用し、血糖値を下げるインスリンの働きを悪くするといわれています。糖尿病はいろいろな疾患の原因になるので要注意です。
歯周病がある方全員がこれらの病気になるわけではありません。ただ、お口の中を清潔に保つことが全身の健康につながりやすいのは確かなようです。