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お口が原因で起こる病気―脳卒中
[公開日:2018/10/30 /最終更新日: 2018/10/29 ]脳卒中で倒れた直後の入院、つまり急性期で過ごされる患者さんの合併症で多いのが肺炎です。嘔吐した物を肺に吸い込んで肺炎になるケースは少なくありません。脳卒中の影響で飲み込む機能が低下したり、口の中が汚く細菌が多くなったりしていると、入院中に誤嚥性肺炎を発症する危険性が高まります。この誤嚥性肺炎を予防するため、医科と歯科の連携による口腔機能管理が行われてきています。
DOCTOR’S PROFILE
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東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 医歯学専攻
老化制御学講座 摂食嚥下リハビリテーション学分野教授
とはら はるか
戸原 玄先生
医科歯科連携による口腔機能管理
脳卒中と誤嚥性肺炎
脳卒中は日本人の死因の第4位を占めます。
脳卒中で倒れた直後の入院、つまり急性期にある患者さんの合併症に多いのが肺炎です。脳卒中の治療中に肺炎を起こすと、安静が必要な期間が長引いて筋肉の衰えにつながり、その後のリハビリテーションにも影響を及ぼします。
脳卒中を起こしてから入院するまでの間に嘔吐(おうと)した物を肺に吸い込んで肺炎になるケースは少なくありません。また、脳卒中の影響で飲み込む機能が低下したり、口の中が汚く細菌が多くなったりしていると、入院中に誤嚥性肺炎を発症する危険性が高まります。
これらの肺炎を予防するため、医科と歯科が併設されている医療施設では早期に医科から歯科に口腔ケアを依頼し、入院後数日以内に口腔管理を始めるケースがあります。ケアを早く始めるほど患者さんの口腔機能の回復が期待できます。
口腔ケアでは口の中を清潔に保つだけではなく、意識が回復する前から頬や舌のストレッチなどを行い、できるだけ早く患者さん自身の口で食べられるようにします。また、意識が無いときに抜けそうな歯をそのままにしておくと自然と抜けて危険なこともあるため、そのような歯も早めに処置しておきます。
地域で行う口腔管理
患者さんの多くは救急搬送された病院での治療後、別の病院に転院してリハビリをしてから、その後自宅や施設に戻ることになります。患者さんの肺炎を防ぐためには、口腔管理を継続的に行うことが何より重要です。このため、リハビリを行う病院と連携を深めるとともに、われわれが訪問できる範囲に患者さんが退院後も暮らす場合には、患者さんの自宅などに出向いて口腔管理を続けるようにしています。
このような医科と歯科の連携は、様々なところで行われてきています。主治医の先生にご相談の上、早期の口腔管理を行うようにしましょう。