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お口が原因で起こる病気―誤嚥性肺炎
[公開日:2018/10/30 /最終更新日: 2018/10/29 ]「誤嚥(ごえん)性肺炎」という言葉を新聞や雑誌などでよく見掛けるようになりました。誤嚥性肺炎とは、高齢者や手術後の患者さんなど抵抗力の弱った人が物を飲み込む際、口から食道に入るはずが、誤って気管に入ってしまい、肺に細菌が繁殖して炎症を起こす病気です。口の中がかなり汚れていて、寝ている間に唾液の誤嚥を繰り返すことがあると、誤嚥性肺炎を発症しやすくなります。
DOCTOR’S PROFILE
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東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 医歯学専攻
老化制御学講座 摂食嚥下リハビリテーション学分野教授
とはら はるか
戸原 玄先生
「誤嚥性肺炎」は防げる
「誤嚥性肺炎」とは
「誤嚥(ごえん)性肺炎」という言葉を新聞や雑誌などでよく見掛けるようになりました。
これは、肺炎は日本人の死因の第3位であり、肺炎で亡くなる人の大半が高齢者なので、「超高齢社会」であるわが国で気を付けるべきこととして関心が高まっているからです。ただ、もちろん誤嚥には注意が必要なのですが、肺炎のすべてが誤嚥によるものではないことも知っておきましょう。
普通に社会生活を送っている人が発症する肺炎を「市中肺炎」と呼んでいます。
それに対して誤嚥性肺炎とは、寝たきりの高齢者や手術後の患者さんなど抵抗力の弱った人が物を飲み込む際、口から食道に入るはずが、誤って気管に入ってしまい、肺に細菌が繁殖して炎症を起こす病気です。食品だけではなく口の中の細菌を誤嚥することによっても感染し、肺炎が起こることがあります。
「誤嚥性肺炎」が起こる理由
では、唾液を誤嚥してしまうと、必ず肺炎になるのでしょうか?
そうとは限りません。われわれの体には防御機構があります。誤嚥すると、まず「咳」が出て、多くのものを排出します。咳で排出し切れなくても、気管に生えている細かい「繊毛」が動いて出してくれます。それでも細菌が残っていたとしても、健康であれば免疫機能が働いて細菌を死滅させるので、普通は肺炎になりません。
しかし、何らかの理由で咳が弱い、繊毛の動きが悪い、栄養状態が悪く免疫機能が低いことなどに加え、口の中がかなり汚れていて、寝ている間に唾液の誤嚥を繰り返すことがあると、誤嚥性肺炎を発症しやすくなります。誤嚥性肺炎を予防するためには誤嚥自体を防ぐことと、栄養状態を良くして口の中をいつも清潔に保つことが重要です。