-
よく見られる歯茎のトラブル
[公開日:2020/7/30 /最終更新日: 2020/7/30 ]介護者が口腔ケアを行う際には、口の中を観察し、いつもと変わりがないか、傷や腫れがないかをチェックするようにしましょう。 一言で口といっても、口の中はさまざまな組織でできています。歯(硬い組織)、歯茎、舌、うわあごの粘膜(軟らかい組織)などです。 今回は、その口の中でも、年齢を問わず症状が出やすいこと、口腔ケア中に変化に気付きやすいところであることから、「歯茎」に注目して、歯茎のトラブルについて原因別にお話しします。
DOCTOR’S PROFILE
-
東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 医歯学専攻
老化制御学講座 摂食嚥下リハビリテーション学分野医員・教授
よしみ かなこ
吉見 佳那子先生
とはら はるか
戸原 玄先生
歯茎のトラブルとその対処法
口の中の汚れによるもの(歯周炎)
歯を磨くと歯と歯茎の境目から出血する、歯間ブラシを通すと出血するのは、多くの場合歯茎の炎症(歯肉炎・歯周炎)が原因です。
歯ブラシが不十分で磨き残しがあると、そこに細菌が停滞し、炎症を引き起こします。
歯周炎が進行すると、歯茎が下がり歯と歯の間に食べ物がさらにつまりやすくなります。
また、「残根(ざんこん)」と呼ばれる、歯の根だけが歯茎に埋もれて残っている状態は、周りに汚れが溜まりやすく、磨きにくいので要注意です。
口腔ケアをしっかりして、磨き残しが無い状態を継続すると、赤く腫れてぶよぶよした歯茎が次第にピンク色に引き締まり、出血もしづらくなります。
歯根の炎症によるもの
以前神経の治療をした歯や、虫歯を放置して穴が空いた歯の中に細菌が感染すると、歯の根の先に膿がたまり、歯茎全体が腫れたり、歯茎におできのようなものができたりすることがあります。
また、歯根が折れたり割れたりした場合も、同様に歯根の周りに膿がたまり、歯茎が腫れます。
元気な状態では無症状なこともありますが、免疫力が低下したり、低栄養、他の疾患やその治療の影響などで、急に症状が現れることがあります。
抗菌薬で一時的に症状をおさえる事はできますが、歯の状態によっては歯科治療が必要です。
なお、歯根の炎症(根尖性歯周炎)にはさまざまな原因があるため、口腔ケアだけでは予防が難しく、炎症がみられる場合はその原因を調べることが重要です。
ただし、被せ物が取れたり虫歯になった歯を放置したりすることが原因にもなるので、口腔ケアの際には、そのような歯がないかもチェックしましょう。
入れ歯(義歯)によるもの
歯茎や頬の粘膜に入れ歯が当たって傷ができ、痛みが出ることがあります。
まず第一に義歯の調整が必要ですが、そもそも口の中が乾燥していると、歯茎や唇、頬の粘膜と入れ歯がこすれて傷ができやすくなります。
義歯を装着する前には、義歯を水でよく濡らし、さらにジェルタイプの保湿剤を口の中や義歯の内側に塗っておくとよいでしょう。
口の中の汚れは、傷から感染を引き起こす原因になるため、口腔ケアと義歯のケアは欠かさず行いましょう。
また、義歯をつけっぱなしにしていると、義歯の形にそって歯茎全体が赤く腫れることがあります。
食事のとき以外は義歯を外し、歯茎を休ませることで症状が落ち着くことが多いですが、口の中にいるカビが原因で炎症が起きている場合もあるため、注意が必要です(カンジダ症)。
この場合は口腔ケアと処方薬で対応します。
カンジダ症なのかを見分ける方法ですが、義歯を外して数日様子を見ても粘膜の赤みが改善しない場合はカンジダ症(萎縮性カンジダ症)が疑われます。
ただし、他の炎症との鑑別が必要な場合が多く、痛みなどの症状がないことも多いので、見た目での判断は難しいかもしれません。
カンジダ症の中には頬の粘膜や舌に白い苔のようなものがつくカンジダ症(偽膜性カンジダ症)もあり、こちらは見分けがつきやすいです。
口の中のチェックが大切
要介護者の方は、病気や薬の作用、免疫力の低下により出血や、歯の症状の悪化など、口のトラブルが起きやすいと言えます。
口腔ケアグッズを活用し口の中を清潔に保ち、変化を見逃さないようにしましょう。
また、症状がある場合は、そのままにせず早期に歯科医師の診察を受けましょう。