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災害弱者のための口腔ケアについて(2)
[公開日:2022/10/28 /最終更新日: 2022/10/28 ]「災害」と聞くと、真っ先に地震や洪水など自然災害が想像されますが、公害や産業、交通災害など人が原因となって起こる人為災害もあります。災害の規模や被害にもよりますが、私たちは、いつ、どこで、どのような災害に遭遇してもおかしくない状況と言えます。私たちは、大きな災害に直面すると突発的な不安や恐怖による混乱状態に陥ります。今回は、そのような混乱状態の中でも口腔ケアが継続できるように、災害弱者のための口腔ケア方法について2回に分けてご紹介します。
DENTAL HYGIENIST’S PROFILE
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兵庫県立尼崎総合医療センター 歯科口腔外科
歯科衛生士
おおにし よしみ
大西 淑美先生
災害時にも口腔ケアを継続できるよう、「水がないとき」の口腔ケア方法をご紹介します
前回ご紹介した、水が「あるとき」と「ないとき」のうち、「ないとき」の口腔ケアの方法についてご紹介します。
図1 災害弱者の口腔ケア内容
例)150cc程度の水を使っておこなう口腔ケア(図2)
準備:コップ2個、スポンジブラシ、歯ブラシ、ペーパータオル
① 水をコップ2個に7:3(A105cc:B45cc)の割合で分ける。
② Aで軽く湿らせたスポンジブラシを用いて口腔粘膜をマッサージしながら拭う。
③ スポンジの汚れをペーパータオルで拭い取る。
④ Aのコップ内でスポンジブラシをすすぎ、コップ内でギュッとしぼる。
⑤ Bのコップで水を軽く湿らせて口腔内を拭う。
⑥ ②~⑤を繰り返す。
⑦ スポンジを歯ブラシに持ち替え②~⑤の手順でブラッシングをする。
※汚れをすすぐためのAは100cc程度が望ましい。そのため、さらに少量の水で行う場合はBを減らすか水はAのみに使用し、Bを保湿リンス等に変更する。
図2 少量の水で口腔ケアを行う方法
例)義歯清掃と保管:水がないとき
準備:口腔ケア用ウェットガーゼ、義歯保管容器
① 口腔ケア用ウェットガーゼで義歯の隅々まで拭き取る。
② 別の口腔ケア用ウェットガーゼを取り出し義歯を包み込んだ状態で義歯保管容器に収納する。
※介助磨きのワンポイントアドバイス(図3)
「ブラッシングで歯の間からかき出した汚れを回収できずに誤嚥させてしまった」というリスクを回避するためには、ブラッシングの時点でスポンジブラシや口腔ケア用ガーゼを使って食べかすなどの汚染物をキャッチしてしまいましょう。イメージは「ホウキ(歯ブラシ)とチリトリ(スポンジ・ガーゼ)」です。
図3 食べかすを安全に回収する方法