-
口腔保湿について
[公開日:2018/10/30 /最終更新日: 2019/10/30 ]口腔ケアを必要とされる要介護者の多くの方が、口腔乾燥と闘っています。 口腔ケアをスムーズに行うためには口腔内を湿潤状態にすることが重要です。口腔ケアの刺激で唾液が自然に分泌される方は唾液で十分ですが、唾液の分泌が難しく口腔乾燥が見られる方は口腔保湿剤を適切に使用して湿潤状態にし、最適な口腔ケアが受けられる口腔環境を整えましょう。
DENTAL HYGIENIST’S PROFILE
-
NPO法人健口サポート歯るる
副理事長
ひらまつ まきみ
平松 満紀美先生
保湿は最適な口腔ケアの前提条件
口腔ケアを始める前に
【口腔ケアを始める前に】
口腔清掃や口腔リハビリを必要としている要介護者の多くの方が、口腔乾燥と闘っています。口腔乾燥の要因として、加齢による唾液分泌の低下をはじめ発熱、脱水、薬剤による副作用など様々です。
口唇も乾燥している方は、口腔ケアを行う前に、リップ代わりに口腔保湿剤(スプレー、ジェル等)を塗布しましょう。保湿を行うことで乾燥により生じたひび割れからの出血を防ぎ、開口時の痛みを低減できます。口腔保湿スプレーは水に濡らしたあとよく絞り、ティッシュオフした口腔ケア用スポンジに噴霧して塗布し、口腔保湿ジェルは指や口腔ケア用スポンジを使って塗布しましょう。
歯科衛生士が口腔ケアに介入する場合、まず口腔内を観察し、唾液分泌が低下傾向であれば第一選択として唾液腺マッサージを行い、唾液分泌の有無を確認します。唾液分泌が見られる方はそのまま口腔ケアを開始しますが、唾液の分泌が乏しい方は口腔保湿剤(スプレー、ジェル等)を使用する必要があります。
以下、唾液の分泌が乏しい方向けの保湿方法を紹介します。
口腔ケアの段階で見る保湿
【口腔清掃時の保湿】
実際に口腔ケアを始めると、口腔内や口唇に乾燥した汚れが付着していることがあります。この付着物は口腔保湿剤でふやかしてから除去します。付着物に応じて口腔保湿スプレーと口腔保湿ジェルを使い分けましょう。口腔保湿スプレーとジェルのいずれかの選択は患者様や環境により変わります。適宜、患者様にとって最適な方法を選択してください。
【口腔リハビリ時の保湿】
口腔内のストレッチをする場合、口腔粘膜の擦過傷予防(粘膜保護)のために口腔保湿ジェルを使用しましょう。一般的に、口腔保湿ジェルは口腔保湿スプレーよりも滑りが良いため、ストレッチには口腔保湿ジェルをおススメします。
【仕上げの保湿】
口腔乾燥が見られる方でも、一連の口腔ケアによる刺激で唾液が分泌されることがあります。刺激性唾液が分泌される方には、口腔保湿剤による保湿が不要、又は、ごくわずかで良い場合があります。口腔保湿剤による保湿を行う前に、口腔内を観察し、口腔保湿剤が必要かどうかを判断しましょう。刺激性唾液の分泌が乏しく、口腔内の保湿が難しい方には、仕上げに口腔保湿ジェルの使用をおススメします。
【まとめ】
このように、口腔ケア(清掃・リハビリ)をスムーズに行うためには、口腔内を湿潤状態にすることが重要です。唾液が自然に分泌される方は唾液で、唾液の分泌が難しく口腔乾燥が見られる方は口腔保湿スプレーや口腔保湿ジェルといった口腔保湿剤を適切に使用することで湿潤状態にし、最適な口腔ケアが行える口腔環境を整えましょう。
口腔保湿の注意点
【口腔保湿の注意点】
- 嚥下に問題を抱える方へ口腔保湿スプレーを使用する際には、口腔保湿スプレーは口腔内に直接噴霧をせず、水に濡らしたあとよく絞り、ティッシュオフした口腔ケア用スポンジに噴霧して口腔内へ塗布しましょう。
- 様々な口腔保湿剤が市販されています。患者さんの口腔内の状態に適した粘度や、お好みの風味等も考慮して、最適な口腔保湿剤を選択してください。
- 刺激性唾液の分泌が乏しい方は、その理由を考えましょう。例えば、脱水が疑われる場合には点滴の開始を、薬剤による副作用が疑われる場合には薬を変えるか減らすことが出来るか等を主治医や薬剤師に相談しましょう。