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口から食べることを目標に

[公開日:2019/7/30 /最終更新日: 2019/10/30 ]

経管栄養の1つとして「胃ろう」があります。いったん胃ろうを作ってしまったら、生涯、口から食べることができなくなると思われるかもしれませんが、胃ろうを使っていても、口からご飯を食べることはできます。患者さんにとって胃ろうは栄養を摂る手段の一つであり、そこからさらにどうしていくと患者さんが楽しい生活を過ごせるかを考えることが大切だと思います。

DOCTOR’S PROFILE

口から食べることを目標に

東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 医歯学専攻
老化制御学講座 摂食嚥下リハビリテーション学分野

教授

とはら はるか

戸原 玄先生

口から食べることを目標に

胃ろうは患者さんの希望を叶えるための手段の一つ

胃ろうとは?

口から食べる機能がとても低くなり栄養が摂れなくなった場合に、おなかに小さな穴を開け、そこから栄養を摂る方法を「胃ろう」と言います。「ペグ(PEG)」という呼び方をすることもありますが、正確には内視鏡を使って胃ろうを作る手術自体を指す言葉です。

胃ろうに対しては一時、批判的な報道が多かったようですが、それ自体が悪いわけではありません。ただ、必要がないのにむやみに作ったり、患者さんの状況がせっかく良くなっているのに使い続けて口から食べないままにしたりすることは良くないと思います。

胃ろうになると「食べられない」?

いったん胃ろうを作ってしまったら、生涯、口から食べることができなくなると思われている方も多いでしょう。
しかし、私達も参加した厚生労働省研究班による調査によれば、在宅や施設で胃ろうのみで栄養摂取している患者さんに対して内視鏡検査を行うと、8割近く(実際は77%)の方が誤嚥なく経口摂取することが可能であったとの結果が得られています。
(平成24年~26年度 厚生労働科学研究費補助金長寿科学総合研究事業の報告書 参照)

胃ろうを使っていても、口からご飯を食べることはできます。むしろ、早く口から食べることができるようリハビリテーションをすることが大切なのです。
私が担当している在宅の胃ろう患者さんでも、早い方であれば初診から数回程度で普通の食事に近いものを食べられるようになります。
場合によっては、最終的に胃ろう自体を除去してしまうケースも少なくありません。
また、飲み込む機能がかなり落ちていても全身の健康状態がある程度保たれていれば、時間をかけてリハビリを行うことで、練習として、または楽しみとして、数口くらいは何かを飲み込めるようになる方もたくさんいます。

胃ろう患者さんの口腔ケア

胃ろう患者さんの口腔ケアをどうしたら良いのかという質問を受けることがあるのですが、胃ろうだからといって一括りにしないことが大切です。
嚥下機能が十分に保たれている方から、かなり嚥下機能が乏しい方まで、患者さん一人一人によって状態にかなり幅があるので、患者さんの状態に合わせて口腔ケアをすることが大切です。

胃ろうをどのように使っていくか

胃ろうを栄養を摂る手段の一つと捉えて、そこからさらに何を目指していくのかを考えることが大切です。
安全という観点だけでなく、安心、快適、希望等、どの部分を実現していきたいのかを考えながら、その使い方を決めていくのが良いと思います。

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